建設業許可の要件を徹底解説！経営業務管理責任者・専任技術者のポイント

建設業で500万円以上の工事を受注するなら、建設業許可は必須です。

でも「許可を取るって、何をすればいいの？」「要件って難しくない？」「申請に落ちたらどうしよう…」こんな不安を抱える経営者は少なくありません。

実は、建設業許可の取得に失敗する企業のほとんどは「ルールを知らなかった」「書類を甘く見た」という理由です。逆に言えば、ポイントをしっかり押さえれば、許可取得はそこまで難しくありません。

この記事では、建設業許可を取得する際に本当に大事なことを、シンプルに解説していきます。難しい法律用語は避けて、実務的な観点からお伝えするので、最後まで読めば「次は何をするか」が見えてくるはずです。

1. 建設業許可が必要になるケース

まず最初に確認すべきことは「本当に許可が必要なのか」ということです。

国土交通省が定めた建設業法では、すべての工事に許可が必要なわけではありません。「軽微な工事」は許可なしでもOK。ここを正しく理解することが、許可申請の第一歩です。

軽微な工事との違い

建設工事は大きく2つに分かれます。

工事種別	許可不要	許可必要
建築一式工事	1,500万円未満	1,500万円以上
その他（土木・電気など）	500万円未満	500万円以上

シンプルです。この金額を超えれば、許可が必要になります。

「500万円以上」の考え方

ここで注意する点は「消費税を含めた金額」で判定するということ。税抜き500万円だから大丈夫と思っていても、税込みで550万円を超えていれば許可が必要です。

複数の工事をセットで受注する場合も、合計金額で判定されます。「小さな工事を何個も」という場合でも、トータルで500万円を超えれば許可が必要になることを覚えておきましょう。

許可を取らないリスク（指名停止・罰則など）

「バレなきゃいいんじゃないか」そう思っている方もいるかもしれません。ですが、許可なしで工事を受注した場合、建設業法違反として非常に重い罰則が課されます。

許可を取るための手間やコストと比べれば、リスクの方がはるかに大きいです。ここは必ずクリアしておく必要があります。

2. 建設業許可の基本要件まとめ

建設業許可を取得するには、5つの要件をすべて満たす必要があります。1つでも欠けると、許可は下りません。

でも安心してください。難しく聞こえますが、実務的には「人」「人」「金」「法令」という4つのカテゴリーでシンプルに捉えることができます。

経営業務管理責任者	建設業の経営経験が5年以上ある人が必ず1人必要
専任技術者	営業所ごとに、建設の専門知識がある人が必ず1人必要
財産的基礎	会社の貯金が500万円以上必要
誠実性	法律を守っている企業であること
欠格要件	破産歴や法律違反がないこと

簡潔に言うと「経営経験のある人がいて」「技術知識のある人がいて」「お金に余裕があって」「悪いことをしていない」この4つなのです。

では、この中で最も重要で、かつ落ちやすいのは何か。それは次に説明する「経営業務管理責任者」と「専任技術者」の2つです。

3. 経営業務管理責任者（経管）の要件を徹底解説

許可申請で最も厳しくチェックされるのが「経営業務管理責任者」です。なぜなら、この人物が本当に建設業を5年以上経営した経験があるのか、役所が厳密に確認するからです。

ここで落とされる企業は、ほぼ「経験の証明が不十分」という理由です。

認められる実務経験のパターン

経営業務管理責任者として認められるのは、以下のようなパターンです。

大事な点は「役職名があるだけではダメ」ということです。実際に経営業務に携わっていた証拠が必要です。

証明資料の揃え方

経営経験を証明するには、複数の書類を組み合わせます。基本は「いつからいつまで」「どんな仕事をしていたのか」を示す書類です。

個人事業主だった場合	確定申告書と建設業許可証の写し、工事契約書など
役員だった場合	登記簿謄本と給与額がわかる書類、決算書など
その他の場合	在籍証明書や契約書、工事実績がわかる書類など

ポイントは「単なる名簿ではなく、実績を示す書類」を集めることです。

経管で落ちやすいパターン

実務を踏まえると、以下のようなケースで落ちやすいです。

最も落ちるケースは「名目だけの役職」です。役職名は立派でも、実際には現場作業しかしていないというような場合は、経営業務管理責任者として認められません。

4. 専任技術者（専技）の要件

次に重要なのが「専任技術者」です。経営業務管理責任者が「経営」を担当するなら、専任技術者は「技術」を担当する人です。

営業所ごとに必ず1人は必要で、その人は常勤（毎日出勤）である必要があります。

資格で満たすタイプ

一番シンプルなのは、国家資格を持っていることです。

1級施工管理技士、2級施工管理技士、一級建築士、二級建築士、電気工事士など、建設関連の国家資格を持っていれば、基本的に専任技術者として認められます。厚生労働省が公開している資格一覧を参考にすると、どの資格が該当するかが明確になります。

実務経験で満たすタイプ

資格がなくても、その業種で10年以上の実務経験があれば、専任技術者として認められます。ですが、この「10年」の証明が難しい。ここが落とされるポイントなんです。

「10年経験」の数え方と現場経験の証明方法

10年の経験と言っても、どんな経験でもいいわけではありません。以下のような点が厳しくチェックされます。

認められる経験	自社の正社員として施工管理を担当した、工事請負契約書に自分の名前が書いている
認められない経験	下請けの外注で経験、事務作業しかしていない、一部業務だけの経験

そして、この経験を証明するのに「工事写真」「施工日報」「工事契約書」などの具体的な書類が必要です。5年以上前の工事は、書類が残っていないことも多く、そこで落ちるケースが増えています。

実務経験が却下される典型例

実際に申請が却下される例を見ると、以下のようなパターンが多いです。

つまり、経験があるだけでなく「その経験を証明できる書類」が必須なんです。

5. 財産的基礎（500万円）をクリアする方法

建設業許可では「会社に500万円の余裕資金があること」を証明する必要があります。これが「財産的基礎」と呼ばれる要件です。

簡単に言うと「万が一のときの保証金」という考え方です。建設業は大きな工事を扱うので、何かあったときに対応できる力があるかを見ているんです。

残高証明で満たす方法

最もシンプルなのは「銀行の残高証明書」です。申請日の1ヶ月以内に銀行で発行してもらい「500万円以上の貯金がある」と示します。複数の銀行口座を合算してもOKです。

借入金で満たす方法（注意点あり）

銀行から「500万円まで融資可能」という証明をもらう方法もあります。ただし、この場合は「借金」なので、自己資本ほど信頼度が高くありません。役所によっては認めてくれないこともあります。

直近決算ベースで満たす方法

決算書の「自己資本」（総資産−総負債）が500万円以上なら、その決算書を出すだけでOKです。すでに利益が出ている企業であれば、これが最も簡単な方法です。

6. 建設業許可申請の必要書類一覧（分かりやすく）

では、実際に申請するときに何が必要かをまとめておきます。

経管・専技の証明書類	履歴事項全部証明書、工事契約書、給与が出ている証拠、工事写真、施工日報など
営業所の確認資料	営業所の契約書、営業所の写真、固定資産税の納税証明など
誓約書	法律を守ることを約束する書類
納税証明	税金をちゃんと払っている証拠
登記事項証明書	会社の登記簿謄本

大事なのは「どれか1つ欠けても申請が却下される」ということです。漏れがないか、何度も確認する必要があります。

7. 申請の流れと期間の目安

では実際に申請するとなると、どんな流れになるのか見ていきましょう。

事前準備

経営業務管理責任者と専任技術者の要件を確認し、必要な書類を集め始めます。この段階が最も重要です。ここで漏れがあると、申請後にやり直しになります。

役所への事前相談

申請先の都道府県建設業課に足を運び「うちの場合は大丈夫ですか？」と確認しておくのが吉です。役所によって細かいルールが異なるため、事前相談で方針を確認しておくと、本申請で落ちる確率が大幅に下がります。

申請 → 審査 → 許可発行

よくある審査遅延の理由

審査が延びるのは、ほぼ「書類不備」が原因です。以下のような点をあらかじめチェックしておくと、スムーズに進みます。

書類の漏れや記載ミスがないか、経営業務管理責任者の経験が本当に5年以上なのか、専任技術者の証拠書類が揃っているのか、営業所が実際に存在し、誰が働いているのか明確なのか、税金の滞納がないのか。この5つを事前に確認しておれば、審査は順調に進みます。

8. 落ちやすいポイントと審査で見られる部分

ここまで読んでくれたあなたは、おそらく「ポイント分かったけど、うちは大丈夫かな…」と思っているのではないでしょうか。

そこで、実際に申請が落ちやすいケースをまとめました。

特に「経管の経験」と「専技の証拠」が不足して落ちるケースが圧倒的に多いです。これさえクリアできれば、許可はほぼ間違いなく下ります。

9. 行政書士に依頼するメリット

ここまで読んで「自分たちでできそう」と思う人もいれば「複雑すぎて自分たちには無理かも…」と思う人もいるでしょう。

正直なところ、申請は自社でもできます。ですが、実務経験の証明や書類の整合性確認で失敗すると、審査で落ちるだけでなく、補正手続きで数ヶ月ロスすることになります。

許可申請の費用と、もし落ちたときのロスを考えると「最初からプロに任せる」というのは、実は最も効率的な選択肢なのです。

10. まとめ：建設業許可は「書類の質」で通過率が変わる

建設業許可申請について、ここまで解説してきました。

最後に、最も大事なことをもう一度言っておきます。建設業許可の成否は「書類の質」で決まります。

経営業務管理責任者が「本当に5年以上経営していたのか」「実績はあるのか」を、複数の書類で証明する。専任技術者が「本当に10年の現場経験があるのか」「その経験は自分たちの工事で証明できるのか」を示す。これが申請通過の鍵です。

書類の質が高ければ、審査官は「この企業は準備が整っている」と判断し、許可を出します。逆に、書類が曖昧だと「疑わしい部分がある」と判断され、落ちるか補正を求められます。

建設業許可は「会社の資格」です。これなしに大きな工事は受けられません。だからこそ、最初から丁寧に準備する。この心構えが、許可取得の成功につながります。

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【参考情報・一次資料】

本記事は以下の公的データおよび一次情報に基づいて作成しています：

国土交通省「建設業許可制度について」
建設業法第29条（罰則規定）
建設業法施行規則（経営業務管理責任者・専任技術者要件）
国土交通省「経営業務管理責任者の要件に関するQ&A」
国土交通省「専任技術者の要件に関するQ&A」
厚生労働省「国家資格一覧」
各都道府県建設業課「建設業許可の手引き」
法務局「履歴事項全部証明書について」